2011年06月20日

「テピダリウム」 ローレンス・アルマ=タデマ

テピダリウム ローレンス・アルマ=タデマ

ローレンス・アルマ=タデマ(Lawrence Alma-Tadema, 1836年1月8日 - 1912年6月25日)はラファエル前派に分類されるイギリスのの画家。

この「テピダリウム」は1881年の作品。

テピダリウムとは、古代ローマの公衆浴場にあった微温浴室のこと。アルマ=タデマは古代ローマや古代ギリシアを舞台にたくさんの作品を描きましたが、この「テピダリウム」もその中の1つになります。

作品の中ではしどけない姿をした若い女性が気だるげに横になっています。女はただその公衆浴場の温もりに恍惚としているだけですが、その様からはえも言われぬほどの官能が匂い立ちます。性描写がない中でこれほどのエロスを感じるのは倦怠が持つ退廃的な官能の力のせいでしょうか。

いずれにせよこの絵が持つ官能性は同時代に描かれたマネの「オランピア」「草上の昼食」の比ではないように思います。

しかし「オランピア」「草上の昼食」がその直接的な裸体表現で囂々たる批判を受けたのに対し、この「テピダリウム」は何の非難も受けませんでした。

マネの作品が日常の中の裸体を描いたのに対し、アルマ=タデマの作品は古代ローマを舞台にしていたため非難の対象とならなかったのです。

Lawrence Alma-Tadema
「Lawrence Alma-Tadema」
 [ペーパーバック]
 著者:Rosemary J. Barrow
 出版:Phaidon Press
 発売日:2003-10-01


posted by 裸の人 at 16:22 | Comment(0) | ローレンス・アルマ=タデマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年05月31日

「ロトと娘たち」 アルブレヒト・アルトドルファー

ロトと娘たち アルブレヒト・アルトドルファー

アルブレヒト・アルトドルファー(Albrecht Altdorfer, 1480年頃‐1538年2月12日)は、ドナウ派を代表するドイツの画家。

ドイツ・ルネサンスの中で特に風景描写を重視し、西洋絵画史において宗教画や歴史画や物語の背景としての風景ではない、純粋な「風景画」を描いた最初期の画家として有名です。

とはいえ油彩画作品の大半は宗教画であり、この「ロトと娘たち」も旧約聖書の創世記を題材にしたものです。

アブラハムの甥にあたるロトは神がソドムとゴモラを滅ぼすことを天使から聞き、二人の娘と共に山中の洞窟に移住します。

ところがその周辺では世のしきたりによって娘たちのところに来てくれる男がいませんでした。

そこで子孫が絶えることを恐れた姉妹はロトにぶどう酒をたらふく飲ませ、父親の意識がなくなったところで次々に交わったのでした。

こうしてロトには2人の子供ができるわけですが、泥酔していたロトは娘が寝床に来たことも立ち去ったことも気づかなかったと記されています。

しかしこのアルトドルファーの「ロトと娘たち」の絵から、そういった背景を垣間見ることはできないように思います。

ロトは娘との快楽に溺れる卑しい男にしか見せませんし、娘も父親を誑かす淫らな女にしか見えないのですが、皆さんにはどう見えますでしょうか?

Altdorfer
「Altdorfer」
 [ペーパーバック]
 著者:Albrecht Altdorfer, Thomas Sturge Moore
 出版:BiblioBazaar
 発売日:2009-07-09

posted by 裸の人 at 16:25 | Comment(0) | アルブレヒト・アルトドルファー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月21日

「鏡を持ったヌード」 ジョアン・ミロ

鏡を持ったヌード ジョアン・ミロ

ジョアン・ミロ(Joan Miro, 1893年4月20日 - 1983年12月25日)はシュルレアリスムや抽象主義に分類される20世紀のスペインの画家。

フォーヴィスムの影響を受けた鮮やかで激しい色調と、キュビスムから影響を受けた極度に抽象的なフォルムを特徴とした詩的絵画で有名です。(下絵参照)

ジョアン・ミロ nocturne

ジョアン・ミロ peinture


ただそういった作風が開花するのは1930年以降の話。

この「鏡を持つヌード」はそれより大分前の1919年に描かれたミロ初期の作品になります。

1919年にミロはパリに赴き、そこでピカソやキュビズム・グループと親しくなりました。この絵ではそのキュビズムの影響を色濃く見ることができます。

こういった作品は後のミロの詩的絵画の原型になっていくのですが、この時点ではミロ独特の極端な抽象性はまだ見られません。

そこから画家が発展していくことを思うと、やはり創造と破壊を繰り返す画家の特性を如実に表しているようで、おもしろく感じられます。

ミロ (ニューベーシック) (ニューベーシック・シリーズ)
「ミロ (ニューベーシック) (ニューベーシック・シリーズ)」
 [単行本(ソフトカバー)]
 著者:ヤニス・ミンク
 出版:タッシェン
 発売日:2002-10-17
ミロ (「知の再発見」双書)
「ミロ (「知の再発見」双書)」
 [単行本(ソフトカバー)]
 著者:ジョアン・プニェット・ミロ,グロリア・ロリビエ=ラオラ
 出版:創元社
 発売日:2009-09-17

posted by 裸の人 at 17:00 | Comment(0) | ジョアン・ミロ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年04月04日

「座る赤い裸婦」 マルク・シャガール

座る赤い裸婦 マルク・シャガール

マルク・シャガール(Marc Chagall,1887年7月7日 - 1985年3月28日)は、20世紀のロシア(現ベラルーシ)出身のフランスの画家。

あのピカソが「マチスが世を去ったら、色彩とは何かが本当に分かっているのはシャガールだけになってしまうだろう。(中略)バーンスで制作された最近の作品を見ると、光に対しての感覚を備えているのはルノワール以外、シャガールしかいないと私は思っている」とコメントしているように情調的ともいうべき豊かな色彩を特徴とし「色彩の画家」と呼ばれます。

その豊かな色彩が開花するのはシャガールがパリに出てからになるのですが、この「座る赤い裸婦」はその前の1909年、まだシャガールがロシアにいる時代に描かれたものになります。

「座る赤い裸婦」は女性の裸体だけではなく、その背景にまでを支配している褐色系の色彩が特徴ですが、これはゴーガンやナビ派の影響と言われています。

この頃のシャガールは「座る赤い裸婦」だけではなく、「死者」(画面下左)や「聖家族」(画面下右)のように同系色で統一された絵を描いています。

シャガール 死者   シャガール 聖家族


この画家が将来「色彩の画家」と呼ばれるまでに画風を変遷させるのは、創造と破壊を繰り返す画家の特性を如実に表しているようで、興味深く思われます。

シャガール (ニュー・ベーシック・アート・シリーズ)
「シャガール (ニュー・ベーシック・アート・シリーズ)」
 [ペーパーバック]
 著者:インゴ・F・ヴァルター/ライナー・メッツガー
 出版:タッシェン
 発売日:2001-05-16
シャガール―色彩の詩人 (「知の再発見」双書)
「シャガール―色彩の詩人 (「知の再発見」双書)」
 [単行本]
 著者:ダニエル マルシェッソー
 出版:創元社
 発売日:1999-10

posted by 裸の人 at 20:59 | Comment(0) | マルク・シャガール | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年03月24日

「女と海」 フェリックス・ヴァロットン

女と海 フェリックス・ヴァロットン


フェリックス・ヴァロットン(Felix Vallotton, 1865年12月28日 - 1925年12月29日)は、スイス出身の画家。ナビ派の一員であると同時に、現代木版画の第一人者でもあります。

「女と海」(Trois femmes et une petite fille jouant dans l'eau:直訳すると「水浴びをする3人の女性と1人の少女)は1907年の作品

水浴びは女性の裸体を描く際のテーマとしてよく採用されますが、他の画家が描く時に見られるような躍動感がこの絵にはありません。

女たちの表情や背景などは極端に抽象化され、まるで時の流れを失ったかのように思われます。

空は色褪せた金色とでも言うべき色で妖しく輝き、鉛色の海は女たちの脚を絡め取っているかのよう。

渋澤龍彦氏が「この絵のなかの海は、あのスペインのダリがしばしば好んで描くポルトリガトの海のように抽象的な海であり、あえていえば精神分析学的な海なんだよ」と評しているのも分かる気がします。

ナビ派(Les Nabis)の「ナビ」はヘブライ語で預言者を意味しますが、この絵には予言にも似た暗示的な何かを感じるのです。

Félix Vallotton (Gallery of the Arts)
「Félix Vallotton (Gallery of the Arts)」
 [ハードカバー]
 著者:Marina Ducrey
 出版:5Continents
 発売日:2008-10-01
Felix Vallotton: Idyll on The Edge
「Felix Vallotton: Idyll on The Edge」
 [ハードカバー]
 著者:Christoph Becker,Linda Schadler
 出版:Scheidegger & Spiess
 発売日:2007-01-15

posted by 裸の人 at 19:38 | Comment(0) | フェリックス・ヴァロットン | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。